千年働いてきました [500番台]
千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン (角川oneテーマ21)
- 作者: 野村 進
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 新書
日本ほど老舗のある国はないらしい。
自分の周囲を見渡してみると、意外と長く続いている老舗のお店・会社はありませんか?たとえば、3代続く老舗の和菓子屋とか、造り酒屋とか。
1代を30年と仮定すると、30年×3代=90年ですし、明治に創業であれば、100年を確実に越えてくることになります。
意外と普通な感じだと思いますが、海外に目を向けると、そんなに長く続いているいわゆる「老舗」はそんなにないことが不思議に感じます。国ができてまだ240年弱であるアメリカはともかく、歴史がありそうなヨーロッパは、戦争があるたびに古いものが破壊されて新しいものができますので、長く続くことは珍しいようです。
同じく長い歴史がある、最近何かと話題の中国も、いまや建前上「社会主義」の国ですから、そんな会社や店があるわけもなく。
そんな長く続いている老舗を調べて紹介しているのがこの本となります。ちなみに一番古いのはだいたい1500年ぐらい続く金剛組という宮大工の会社が世界最古の会社のようです。実際には、いろいろと大変だったらしい話があるようですが、詳しくはこの本で確認してください。
この本で一番気になったのは、「伝統は革新の連続だ」という言葉。長く続けるには、革新が絶対必要であって、長く続く秘訣はこれなのかもしれません。逆に言えば、変わり続けることができなければ、続かないということかもしれません。とても重い言葉だと思いますが、今の日本は、ちゃんと革新し続けているのでしょうか?
電線一本で世界を救う [500番台]
こんな簡単なことでも、改善されるものなのか。
車の話ですが、著者は普通の(と言っていいのかはわかりませんが・・)オーディオマニアの方です。オーディオマニアでは、この手のケーブルの種類をどうするかについて、凝ってしまう人がいるのも事実です。現実として、ケーブルの材質を変えるだけで、出てくる音が変わるのは知り合いのマニアの「耳」をやっていましたから。
そんなマニアが、ふとしたことから車の電気回路を見たとき、アースをボディにしていることを見て驚き、スピーカー用の余りのケーブルでアース線をしっかりと設置してみたら燃費が改善したり、排気ガスがきれいになったということがこの本の骨子となっています。
つまるところ、車は走る機械であって電気的なものであるという認識は元々なかったということなのでしょう。だから、アースをボディに取るなんてことを普通にやっているわけです。そう考えると、デスクトップのPCも同じようにスチールのフレームに直にアースしている場合があったように思いますから、これもしっかりアースしてやれば、予想以上に性能がアップするかもしれません。
しかし、残念なことにこのアイデア、日本では特許を取ることができず、メーカーや研究者から相当のバッシングをされたようです。この辺が日本という国の限界なのかもしれません。
そういえば、今年のノーベル賞も、ひとりはアメリカで研究している方でした。日本はアイデアが実を結びにくいということを、アイデア以上に問題に感じる、そんな本です。
PS
実際に製品化されたものは、グランドブースターという製品名となっています。また、カーマニアの間でも、スパークプラグのアースを取ることは、やはり広く知られたことのようでもあります。
タグ:グランドマスター
フォールアウト [500番台]
フォールアウト―世界貿易センタービル崩落は環境になにをもたらしたのか
- 作者: フアン・ゴンザレス
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/04
- メディア: 単行本
このような災害が環境汚染の引き金になることも知るべきか。
9.11で崩壊した世界貿易センタービル(WTC)。あれからかなり立ちましたが、超高層ビルに飛行機が突っ込み、そしてその後ふたつのタワーが両方とも崩壊した映像は、今でもはっきり記憶しているショッキングな映像でした。あのとき、崩れ落ちるビルと立ち上がる粉塵は、その辺一帯を覆いつくしてしまうくらいの激しいものでした。
ですが、このWTCの崩壊の裏で、実は重要なことが発生していたことを、この本は示しています。それが「環境汚染」です。
1973年に完成したこのビルは、当時それほどの危険性を認識されていなかったアスベストや、中の事務所で使われていたPCの鉛の汚染が崩壊したときにその周囲にばら撒かれてしまったようなのです。そのために、救出に携わっていた救急隊員に健康被害が集中していたのに、市当局は早く現場に人が入れるようにしてしまう愚挙を犯してしまう始末。
これはたまたまニューヨークの話でしたが、例えばこれが日本で巨大な地震が発生して高層ビルがたくさん崩壊したら、同じようなことが起きうることではないかと思ってしまいます。実際に調査の記録がないのでなんとも言えませんが、阪神大震災のとき、あれだけビルや家屋が倒壊したことを考えると、実は同じようなことが起きていたのではとも考えてしまいます。
WTC崩壊でどのような健康被害があったのか、その対策としてどのような準備が必要かはこの本にしっかり書かれています。地震の被害が考えられる日本では、この対策も考えるべきなのかもしれません。
素材転用アイデアブック [500番台]
頭の固くなるとこんなことはできないかも。
この本は、建築に建築資材以外のものを持ってきて使ったというアイデアの事例集となっています。もともとは、非常階段を下ろすところが残念ながら高さが少々足りなくて、「さあどうしよう」から始まったようです。
このときは、メッシュのフタのようなものを組み上げて踏み台のような形にして解決したのですが、普通であれば追加予算を組んで台を作るようなことになるはずです。でも、そこを工夫したのが最初というのは、実は意外と面白い仕事なのかもしれません。
実は建築に限らず、このようなほかの資材を転用できないかと考えることは結構やったことがあります。だから、ホームセンターはなぜか端から端まで全部見ることが楽しくてしょうがありません。よく人に頼まれてDIY的なことをやってもいましたから、逆に知識がないことが自由な発想につながっていたように思います。
建築に転用することはちょっと難しいところもありそうですが、それを実際にやってモノになっているのはなかなか楽しいものです。実際、この転用から建築資材として販売されるようになったものもありますので。最近見たことがありませんか?天井に使われている穴がたくさん開いているアルミの板材は、この転用からだそうです。
ゴミ分別の異常な世界 [500番台]
これを読むと、今のゴミを分けること自体バカらしくなってくる。
今、これを読んでいるあなたのところの自治体では、ゴミを何種類に分別して出していますか?私の住む仙台は、燃えるゴミ、缶・ビン・ペットボトル、プラ包装、そして紙に分けて出しています。燃えるゴミは週2回、缶・ビン・ペットボトル、プラ包装は週1回、紙は月2回収集に来ます。
最近役所から「ゴミがこれくらい減りました」というチラシが来ましたが、プラ包装が収集された後にどのような手続きを踏んでリサイクルされているのかを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか?それ以上に、その回収にどれくらいのコストがかかっているかも。
ゴミについては、34分別をしている町がずいぶん視察の対象となって全国から人が集まっているようですが、数多く分別しているからといって、それが必ずしもいいとは言えないし、他の自治体に導入できるものでもないというのが実態のようです。そのひとつの例が、生ゴミを堆肥にすることです。34分別している町は、基本的に堆肥を使う畑がたくさんあります。しかし、都会で生ゴミを堆肥にしてもその堆肥を消費すべき畑がありません。作られる堆肥の質がよくないために、売ることもできないと、成功しているからといってすぐ真似ができないところが難しいところです。
これ以外にも、24分別をしているのにゴミが一向に減らない町の話や、市民がいくら努力しても、観光客が台無しにしてしまう、観光が中心となっている自治体の悩み、焼却炉を作りすぎて燃やすためのゴミが足りない東京23区など、ゴミにまつわるリアルな話がたくさん出てきます。平成の大合併でゴミ分別のルールが滅茶苦茶になった自治体も多いようです。
実際には利権が絡む部分がありますから、どうしても生臭い話が出てきてしまうのは、ゴミ問題ばかりではありません。だからこそ、一度分別にどのくらいのコストがかかっているのか、どのような流れでリサイクルされていて、その業者には年間いくらのお金(自治体の予算として)が渡っているのかは調べるべきでしょう。リサイクル=善、ゴミを分別する=善という図式、本当にいいことなのかこの前提条件を疑ってみる時期なのかもしれません。
ボールのひみつ [500番台]
ボールのひみつ―野球、バレー、サッカー、バスケ、テニスetc.様々なボールの歴史や秘密 (MONO Visual series)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 新星出版社
- 発売日: 2009/04
- メディア: 単行本
身近にあるのに予想以上に最先端で高性能。
ボールは、子どもの頃は身近にあるものの代表といえるでしょう。この本は、さまざまなボールをその歴史を含めて紹介しています。
例えば、軟式野球のボール。私が子供の時には町内会のチームがあって試合をしていました。そのときにこの本でも紹介されている古いボール(菊のはなびらのようなものがボール全体に刻まれているもの)がありました。この本を読んで、改めてこれはずいぶん古いボールなんだなと実感したものです。それを見たことがあるというのもどうかというくらいの古いボールです(笑)
また、バレーボールのボールは、体育の授業でやっていたときは真っ白の皮のボールだったと思いますが、今テレビでバレーボールの試合を見るとカラフルなものが使われています。これも最新の技術を導入して作られてるものだそうです。
そういえばサッカーボールはワールドカップやオリンピックがあるとその都度ボールが新しくなります。縫い目が内側になり、雨に濡れても水を吸わなくなり、そしてよりコントロールしやすく進化していきます。次のワールドカップが来年になりますが、きっと最新技術を駆使したボールが登場することでしょう。
ボールと名のつくものはほとんどが網羅されています。そしてその進化は、気がつかないうちに行われているようです。
エレベスト [500番台]
いい間違いに注意、繰り返し言うとかみそうです(笑)
エベレストではありません。エレベーターの写真集というのが正解かもしれませんが、そんな本が出版され、しかも図書館にあったので借りてしまいました。
最近は、Webがある関係でこのような誰も気に留めないようなことを面白がってやっている人がいて、それがちゃんと本になる時代でもあります。このエレベーター「鑑賞」ガイドは、実際に出かけてみたいと思うようなエレベーターから、それは動くのか?と思えるものまでいろいろとピックアップされていて、結構心を動かされる人がいそうな内容になっています。
エレベーターの本ですから、最近のエレベーターの特徴かもしれない行き先の階のボタンを間違えた場合のリセット方法なども紹介されています。主にリセット方法として、そのボタンをダブルクリックする方法と長押しする方法が紹介されています。私が今年の3月まで勤めていたビルは、ダブルクリックでリセットできました。新しいエレベーターにはあるようなので、試してみてはいかがですか?
このような、役立ちそうな話題から、古い映画でしか見ないような手動で蛇腹式のドアを開けて乗らなければならないエレベーター(しかも現役)や、マッカーサーも使ったであろうビルのエレベーター、銀座博品館のエレベーターなど、人を連れて行ったらちょっと自慢できそうなものがいくつもあります。こんなことで自慢しても「引かれる」だけかもしれませんが、世の中には、こんなものも注目している人がいること、そしてそのつもりで見ると面白いことを感じてほしいものです。
PS
今勤めているビルのエレベーターは、閉じるのボタンがありません。省エネらしいですが、これまた例外中の例外のエレベーターかもしれません。
タグ:エレベーター
空想キッチン [500番台]
空想キッチン!(ナレッジエンタ読本5) (ナレッジエンタ読本 (5))
- 作者: ケンタロウ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: 単行本
著者が言い切る不毛な本、でも絶対に面白い!
例えば飲みに行ってあんまり意味のない雑談になると、よくネタになることとして、「アニメに出てきた食べ物で、何が実際に食べたい?」というものがあります。私はもう断然はじめ人間ギャートルズのマンモスの肉です。あの骨についた肉、直火であぶって食べたらうまいだろうなと今でも思います。実際に作るとしたなら、金串に牛肉の薄切り肉を巻きつけてこんもりと塊として、それを焼けばいいかな、と。
この本は、その本当にあるなら食べてみたいアニメの食べ物についてあれこれ語り合い、極めつけは料理研究家のケンタロウさんが本当にそれを作って柳田理科雄さんが食べるという実に無謀かつうらやましい企画を実現した本です。食べたいものの代表でもある「小池さんのラーメン」、「ハイジのチーズのパン」、「梅さんの寿司(実は相当巨大らしい)」、「日本昔ばなしの大盛りご飯」、「チビ太のおでん」などが紹介されています。
だいたいアニメの食べ物を実際に食べてみようと思うことはあっても、それを実現しようとすること自体かなり無謀なことです。でも、そこは料理研究家、本物に近い感じ(どこが本物かは別として・・)に仕上がっています。ハクション大魔王のハンバーグなどは、出来上がりの写真を見ても実にうまそうです。
ものはためし、どこかでメニューとして出してくれるお店ないですかね?
見えないものを見る技術 [500番台]
この技術は、非常に大事でいろんなところで使われている。
見るということを考えてみます。見るには、非常に当たり前ですが見えなければ見ることができません。呪文みたいですが、例えば体の中を見ようと思うなら、手術で開けないと見られませんでした。
病気かどうか分からない人のおなかを切ることなく見ることができたら、きっと(というより当然)からだの負担は少ないものになります。この本は、そのままでは見ることのできないものを見る技術を紹介しているものです。
一番身近なモノとしてはやはり体を調べるものでしょう。経験した人が多いのはやはり超音波ですし、最近のがん検診で使われているPETも見えないものを見る技術です。
もちろん、体だけではありません。いわゆる非破壊検査と呼ばれる製品を壊すことなく内部を検査するものもあります。以前あったジェットコースターの事故で、本来ならばやらなければならなかった車軸を検査するのもこの非破壊検査の一種です。
他にも、大気の調査なども、調べるにも調べにくいモノの代表ですが、これも調べることができるから大気汚染の状況が把握できるわけです。
このように、「見えないものを見る技術」は、意外と身近にあるのです。今度道を歩いて探してみませんか?大気汚染の測定装置がなにげなくおいてあるかもしれませんよ。
オニツカの遺伝子 [500番台]
ここがスポーツマーケティングの始まり。
現在、トップアスリートはスポーツ用品メーカーからスポンサードを受けて競技を行います。このような流れを作ったのがオニツカだったということは、この本で初めて知りました。また、大会に行くとメーカーが販売やメンテナンスのテントが出ているときがありますが、これもオニツカが始めたことなのだそうです。
ちょうど今日は北海道マラソンがありましたが、夏の炎天下の長距離走はシューズの中が高温となり、そのためにマメができてしまって走れなくなってしまうのだそうです。でも、オニツカがシューズの中の温度がどのように変化していくかを徹底して測定し、その変化に対応するシューズを作ったからこそメーカーとしての評価を確定したのだとか。
このようなトップアスリートをサポートする職人がいて、それを使ってもらおうとする広告・営業部隊がいて、日本のスポーツが支えられています。こんな会社が世界と戦う日本人選手をサポートしているんですね。
アシックスに社名変更したとき、オニツカタイガーのブランドを止めようとしたらしいのですが、このブランドの影響力を考えて残したおかげで、今の復刻版のブームになったというのも、知られていない話かもしれません。