スーツの適齢期 [500番台]
スーツの適齢期 (集英社新書 433H) (集英社新書 433H)
- 作者: 片瀬 平太
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/08/17
- メディア: 新書
スーツは年齢を経てこそのものである。
スーツを着るようになってから25年ぐらい経過したことになります。最近の仕事は逆にスーツにネクタイ姿でない方がいいような職場なので、スーツを着ていませんが、それらしくなるまでにそれ相応の時間がかかったことは覚えています。
実際、就職活動をするリクルートスーツ姿の大学生を見ると、スーツに着られていて「着こなして」はいないので、「着たことがないんだな」ということがすぐにわかります。スーツはある程度の年数や年齢が必要な洋服なのです。
この本は、スーツは50代から着こなしを楽しもうというものです。ある程度の年齢に達していないと着こなせない幅広のストライプのスーツなどは、若いうちには無理なものの代表でしょう。ブランド物のスーツも、やはり着こなすには時間が必要であると思うところはあります。
でも、スーツをそうやって着こなそうとしても結構面倒なので、この本ではシャツの着こなしやポケットチーフの使い方から始めてみたらという簡単な入り口も紹介されています。ポケットチーフも実に奥が深いものです。
知っているプロバスケットのヘッドコーチも、毎試合スーツにポケットチーフを差していますが、奥様の見立てだそうです。ちょっとしたおしゃれですが、実にダンディで似合っていました。そう、まずはこんなことからおしゃれを楽しんでみたいと思う素敵な本です。
クルマ界のすごい12人 [500番台]
クルマとそれをとりまく世界自体が文化そのモノである。
クルマ界というと、トヨタだホンダだと、メーカーが主導のような感じがあります。クルマ=製造メーカーという図式です。でも、この本で取り上げられている12人にはメーカー関係者といえば日産のデザイナーをやっていた方(現在はアウディのデザイナー)ぐらいで、まさにクルマの周囲の中で文化を広めた人が中心となっています。
例えば、グランツーリスモの開発者。これが一番最初であること自体がこの本の面白さです。売り上げだけなら宮崎アニメの2倍以上、世界中でヒットした「ソフト」ですが、これもクルマの運転ができること、そしてそのクルマを所有できることが楽しいゲームでした。たしかに、このようなソフトも文化の一翼をになっていると言えます。
他にも買い取り専門のガリバーとか、カーコンビニ倶楽部、ヤナセの名誉会長に並んで、F1用のホイールの製造メーカーやインパルの社長(というより、日本一速い男と呼ばれた星野一義と言ったほうがいいかも)が紹介されています。
出てくる12人は、共通しているところはそのエネルギッシュなことでしょう。ここまでのエネルギーを持っている人がいるからこそ、クルマの文化は発展しているのかもしれません。クルマの世界も、幅が広く、奥が深いものです。
「猛毒大国」中国を行く [500番台]
今年のことですが、もう忘れていませんか?
冷凍ギョーザに高濃度の農薬が入っていて、それを食べた人が中毒症状を起こして入院したことがありました。今年の1月のことです。半年以上経過したために、もうだれもこの話題を出すことがありません。もっとも、オリンピックが近いので、だれも話題にはしませんが。
原因も真実も何もわからないままうやむやにされようとしていますが、これを読むと、ちょっとこの国は「大丈夫か?」と思うくらいとんでもなく大変な国であることを実感させる内容となっています。
公害は流し放題だし、段ボール肉まん(偽物だったけど)や漂白剤を入れまくりの春雨なんてのも、あの国ではどうやら普通の話のようです。もっと怖いのは漢方薬の扱いです。西洋の薬のようにしっかりとした検査やチェックを行っているわけではないので、中身については信頼が必ずしもあるわけではないようです。だから、直輸入して健康被害が出ていてもおかしくないわけです。
著者はかなり危ない橋を渡って現地取材をしてこの本を書いているとのことです。大きくなりすぎた、かの国はウラがありすぎて、やはりそこの輸入品は考えたいと思わせる内容でした。
いつまでもデブと思うなよ [500番台]
ま、ベストセラーですけどね。
ベストセラーとなった「ダイエット本」です。新潮新書を読み尽くすことを目標にしているから読んでみただけで、そんなに興味があるわけではありませんでした。ただ、読んでみるとやはり思うところはいくつかあるところを見ると、やはりベストセラーかなと。
まずは第一章に出てくる「見た目至上主義」。たしかに最近は、「まず見た目(それもステレオタイプ)」が優先されていて、それから外れてしまうとかえって疎外されてしまうことがあるとか。たしかに太っている=たくさん食べると期待されてわんこそばを100杯以上食べた中学時代の国語の先生(柔道部顧問だったので、もちろん立派な体格の持ち主)を思い出しました。血液型のステレオタイプもこの範疇に入るでしょう。
ふたつ目はは、レコーディングダイエットという考え方。口にしたものをすべて記録していくだけでやせるというものです。「水を飲んでも太る」人は、水以外に必ず何か食べているはずですし、「酒しか飲まない」人も、なぜか帰り道にラーメンをしっかり食べていたりします。「太るのは、消費以上に食べるから」という単純な事実を発見するにはぴったりな方法だと思いますが、これも「オタク」だからという感じがするのです。オタクは自分の興味のあることにとことんのめりこむところがあります。だから、ゲームやアニメに向かう気持ちを自分の体に向けてしまったからこそできたダイエットのような気がするのです。
そこまでの熱意がない、普通の人にはもしかしたら無理なダイエットかもしれません。
最後に、空腹感の段階が判別できない状況であった著者が語るところも、やはり気になるところでした。まったくの空腹を0、完全な満腹の状況を10として、空腹でも満腹でもない状況を5とした場合、自分の体の状態がどうなのかを著者は太っていたときはわからなかったそうです。太っているときは、だいたい3から4(空腹ではないけど、決して食べられない状況ではない)なのにその時点で食べてしまっていたそうです。だから、つねに満腹ちょっと手前の状態が続き、オーバーカロリー=太るだったとか。
体の状況が自分で把握できないということは、いい話ではありません。でも、それが今の日本の現状なのかもしれません。今これを読んでいるあなたは、自分の空腹はどの段階ですか?5なのにお菓子を食べていませんか?
スーパーコンピュータを20万円で創る [500番台]
スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書 395G)
- 作者: 伊藤 智義
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 新書
専門家でなくても、すごいコンピュータは作ることができる。ただし用途限定。
この本は、コンピュータについてはアマチュアである理論天文学の研究者が、自分たちの研究のためのコンピュータを作った経緯を紹介したものです。コンピュータと言っても、もちろんパソコンの組み立てなどというレベルではありません。回路図を設計し、ICを発注し、自分の希望する動作(というより、たくさんの浮動小数点計算)をする特殊なコンピュータです。
これが生半可にコンピュータの知識があると当時のスーパーコンピュータ並みの性能は出ないでしょう。パソコンのように万能ではなく用途を限定してその機能のみに特化したコンピュータを、アマチュアが作ったからこんな性能が達成できたともいえます。つまり、専門家はどうしても「できない」ことが目につきますが、アマチュアは「できそうなところ」に目を向けますから、その差とも言えるわけです。
これを読むと、専門的な知識があると、逆にそれが邪魔をすることがあるという、よく体験する話を思い出します。会社で仕事をしていても、新人が出す素朴な疑問を、疑問に思わなくなってしまっているベテランがいることがよくあります。専門知識が視野を逆に狭くすることは、子どもの鋭い質問にたじたじとなる大人を見てもよくわかります。
もっとも、その設計・配線・製作をやったのが東大の大学院生であるということは、やはり東大生の優秀さを示すものかなと・・
ハッブル望遠鏡の宇宙遺産 [500番台]
天気のいい夜は、夜空を見上げて。
今日から通常営業に戻ります。今日東北地方は梅雨入りしたので、しばらくは星空は見られないのですが、この本を見る(読むではなく)と星空はキレイなものだということを改めて実感します。
ハッブル宇宙望遠鏡は、地球の大気がないところに望遠鏡を持っていったらきっと観測しやすいだろうということで考えられたものです。ですが、ようやく打ち上げたらピントが正しく合わなくてがっかりだったとか、いろいろと逸話のある望遠鏡です。でも、いわゆる「コンタクトレンズ」を入れてピントが合わせられるようにする修理をしてからは、「宇宙は本当はこうなんだ」という写真をたくさん地上に送ってきました。
宇宙では、遠くを見るという行為はタイムマシンと同じです。遠い過去に放たれた光が、いまやっと地球に届いているのですから。宇宙が始まった頃は、こんな感じだったのだろうかと、そんな気分も感じさせる写真がたくさん掲載されています。
残念ながら、機器の耐用年数が過ぎてしまったので、まだかろうじて使える機器で観測はできるようですが、後継の宇宙望遠鏡は2013年打ち上げ予定なのだそうです。今は衛星軌道を回る巨大なゴミみたいなものらしいです。地上に落とすこともできず、また修理することもできず、このまま地球を回り続けるのかもしれません。
都市部は、もう星空を見ることはできません。夜が明るすぎるのです。仙台も、市内中心部の近くに天文台がありましたが、今年ずっと山の方に新しい天文台を建設してオープンする予定になっています。プラネタリウムも閉館に追い込まれていく今の時代、星はもしかしたら本やネットでしか見られなくなるのかもしれません。
そのネットで見られるサイトはこちらになります。
人体 失敗の進化史 [500番台]
獣医師の語る人体の進化。
著者は獣医師です。獣医師とはいえ、主な仕事は死んだ動物の遺体の解剖からその動物の生態を調べようというもののようです。ですから、動物だったらあらゆるものを取り扱っています。そしてその解剖からの考察で、それぞれの機能がどのような進化を経て今の形になったかを教えてくれます。
とにかく普通に考えると、人間をはじめとした生物の体は「奇跡的」な構造のような感じがします。しかし、著者によると「かなりやっつけ仕事の設計変更」が繰り返されてここまできたと言えるのだそうです。
例えば、耳の奥にあるちっちゃい骨のセットである耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つ)は、鼓膜から音を伝える重要なパーツです。でも、最初からこんなちっちゃい骨を設計していたかというとそんなことはなく、もともとは顎の骨の一部だったのを著者いうところの「強引な設計変更」で音を聞くパーツにしちゃったというのが解剖から分かる進化なのだそうです。
魚のヒレから手への進化もかなり無理やりらしいし、たまたまそこにある部品を実にうまくやりくりして今の生物が出来上がっているようです。もちろん相当長いスパンがあっての設計変更ですから、次の設計変更がすぐ見られるわけではないですが。丹念に動物の遺体から研究している研究者がいるから、このようなことがわかってきたわけです。
ですが、著者のような研究は、実は大変な状況なのだそうです。その研究者を取り巻く環境についての苦言が、本書の最終章を使って説明されています。今の研究者を取り巻く環境は、「お金になる研究ばかり奨励される」状況なのだそうです。そういえば国立大学も法人化されてお金を自分たちで稼ぎ出さないといけない世の中になりました。そのため、お金がない大学は経営そのものが立ち行かなくなる時代なのです。
おかげでお金になる研究を奨励するようになり、著者の行っているような基礎研究に該当するようなものはやりにくくなってきています。目の前のお金に流されるようだと、大学そのものも、研究者も行き詰まるのではないかという危惧を感じさせる、別の意味で考えさせる1冊でもあります。
お菓子を仕事にできる幸福 [500番台]
仕事ができることの幸せ。
この本は、東ハトのCEOが作ったものです。実は東ハト自体は2003年に民事再生法の申請をして、事実上倒産してしまいました。そして会社を再建するために、価値観を共有したいと考えてこの本を作ったというものです。
中身は絵本のようなものです。今回読んだものは市販されたものですが、実際に社員に配るために作ったものは飛び出す絵本だったと書かれています。そして作成にはCBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)として中田英寿の名前もあります。もともと東ハトの役員になったというニュースが流れたことがありましたが、このようなブランドの確立に一役買っていたということのようです。
内容は、決して難しいことを書いてはいません。でも、お菓子を作るという夢のあることを仕事にできることは幸せなんだと思いがこめられています。たしかに、会社が立ち行かなくなって再建途中でも、仕事はしなければなりません。モチベーションを持ち続けることの難しさを、この本でどうにかしたいという思いが詰まっているのです。
仕事についていろいろと悩んでいる人は、一度目を通してみる価値はあります。仕事があることは、幸せなことなのですから。
180円スニーカーはどのように生まれたのか? [500番台]
180円スニーカーはどのように生まれたのか?―靴業界に革命を起こした大ヒット商品の裏側
- 作者: 「プロの仕事」研究会
- 出版社/メーカー: 幻冬舎メディアコンサルティング
- 発売日: 2008/01
- メディア: 単行本
これは翻訳モノのビジネス書と同じような内容だ!
180円スニーカーを売っているヒラキという会社があります。ちょっと前に話題となっていろいろなところで取り上げられたので、聞いたことがある人も多いと思います。この本は、そのヒラキがどのようにして会社を動かし、そしてインパクトのある製品を作っているのか紹介しているものです。
私の最初の印象では、「180円スニーカーは色物」という感じがしてそれほど気にも留めていませんでした。いわゆる「安かろう、悪かろう」というイメージです。でも、この本を読むと、180円スニーカーはまず180円という価格を決定し、それからどうやったらそれを実現できるか、製造してくれそうな中国の工場をとことん足で探した様子などが書かれています。
この会社、非常にエネルギッシュな会社ですが、方針や考え方は最新の洋書の翻訳を読むような、そんな内容となっています。そこで働く人を大事にするとか、上に立つものがしっかりとしたビジョンを提示しているとか、アメリカでベストセラーになっていそうな内容となっています。日本には、まだまだこのような情熱を持った会社があるのです。そう簡単に日本は転ばないぞと思わせる、その力を見習いたいと思わせる1冊でした。
とりあえず、靴を早速買おうと思います。安いですから(笑)
世界一役に立たない発明集 [500番台]
古きよき時代の、トンデモ発明集。
ビクトリア朝時代ぐらいの発明品を紹介する本です。ちょうどこのぐらいから特許という考え方が普及してきたようで、結構面白い発明が記録として残っているのでこのように紹介されているわけです。
で、どんなものが紹介されているかというと、初めての実験が「限りなく成功に近い」と言われた通常動力潜水艦(成功じゃないところがミソ)、水洗トイレのあれこれ(雨などの排水利用のトイレ、大雨だとひんぱんに流れて大変)や、土かけトイレ(用が終わったら土をかけて臭くなくするらしい)、寝たままで懸垂が出来る?ベッドに自動ゆで卵器、揺りかご揺らし器(兼バター作成器)など、なんだこりゃ?のオンパレードです。
当時は、何か困ったことがあれば、発明でなんとかしようとする時代だったので、こんな突飛なアイデアが出てきたようです。でも、困ったことがあればとにかく「コレ」でなんとかしようという考え方、今の時代にも通じていると思いましたね。さしあたり今の時代は、困ったら「Web2.0」か「インターネット」に頼るところでしょうね。もしかしたら、100年ぐらい先には「バカな時代だった」と言われるかもしれません。