死亡フラグが立ちました! [900番台]
死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 5-1)
- 作者: 七尾 与史
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/07/06
- メディア: 文庫
ピタゴラ装置みたいな完全犯罪(笑)
珍しく日本の推理小説です。しかも完全犯罪モノですが、その手口がどう考えてもありえない手口です。なぜって殺し屋に狙われたターゲットは、事故死としか思えないカタチで命を落とすのですから。
例えばヤクザの組長は、転んで転倒したらそこに鉄アレイがあって、ちょうど頭が当たって事故死したことになってましたが、これがちょうど転んだらそこに頭がいくから鉄アレイをそこに置かせたという、どう考えてもありえない仕組みです。
でも、これを実写で映画化したら、それはそれでスラップスティックコメディとして面白そうだと思うんですけど、誰か映画化しませんかね?
そうそう、タイトルの「死亡フラグが立ちました!」は、ホラー映画で、なぜか深夜にひとりプールで泳いだりすることです。そう、そんなことをするヤツは、だいたい次のシーンでは殺されますから、死亡フラグが立ったなんて言い方をするんだそうです。
もう一度高校古文 [900番台]
もう一度 高校古文 「日本の古典文学」作品の多様性がこの1冊で味わえる
- 作者: 貝田 桃子
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2010/11/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
改めて、古典を読み返してみる。
今年の3月まで高校で仕事をしていましたが、隣の席がベテランの古文の先生でした。パソコンの相談をずいぶん受けましたが、チラチラと古文を生徒に教える話が聞こえてきて、懐かしいというか、役に立つ以前に知っておいても決して損はないと思いながら話を聞いていました。
そんなときに、こんな本が出てくるのだから、面白いものです。これは、高校の古文でよく出てくる作品の一部分を取り上げ、原文と現代語訳を並べて読ませてくれます。
不思議なもので、どう考えても原文のほうが読みにくいはずなのに、古文特有のリズムが体に染み付いているのかなじむ感じがあります。かえって現代語訳の方に違和感があるくらいです。
高校のときは、「役に立つのか?」と思えた古文ですが、これこそ「日本の教養」なのかもしれません。枕草子や徒然草、奥の細道などほんの一部分しか学ばないのに、それが必ずどこかに引っかかっていて、つい言葉に出そうになります。
そして、それが通じるのだから、時間をかけて、それこそ1年でもかけてゆるゆる読んでみたいと考えてます。古文・古典には、それが必ず残ってきた理由があるはずですから。
ロードサイド・クロス [900番台]
意外とリアルな世界も、ここまで来ているかもしれない。
おそらく、最近読んでいる唯一の小説家もしれません。500ページを超えようかというハードカバーですが、読みだすと一気に読み進めてしまうものでもあります。ですから、精神的にも肉体的にも余裕がある時じゃないと、取りかかってはいけない作家です(笑)
で、今回の作品は、メインのリンカーン・ライムではなく、そこに「ゲスト出演」していたキャサリン・ダンスものとなっています。
今回の舞台は、とある「不正を摘発する正義」のブログに犯罪者のように書きこまれた少年が、コメントを書き込んだ人間を襲うことがベースになっています。
日本では私も含めて実名を出さないことがほとんどですが、アメリカは実名で堂々と書いていることがほとんどのようです。だから本人を割り出すのはそれほど難しくないような状況のなか、次々と犯行を繰り返して・・という内容になっています。
ネットの世界とリアルの世界の区別がつかなくなってくることについては、日本でも事件になることが最近よく見られることです。昨日歩行者天国が復活した秋葉原での事件も、ネットに犯行予告が書かれていたことは忘れられないところです。
狭いエリアの中であれば、コメントを書いた人間を特定することも決して難しいことではありません。日本でも、これと同じ殺人事件が起きても、決して不思議ではないと思えるくらい、そんなリアルな不安感を感じる作品です。
このブログはコメントもトラックバックも閉じていますが、決してこの本がきっかけではないので、その点はあしからず。
タグ:ジェフリー・ディーヴァー
ギムレットの海 [900番台]
久しぶりにバーのカウンターに座りたくなりました。
この本は、1つのカクテルとそれを飲む男と女のショートストーリーを集めたものです。ハッピーエンドもあれば、そうでないものもありますが、カクテルがいいスパイスになっています。
取り上げられているカクテルは、ギムレットにマティーニという有名なものから、あまり飲んだことのないものまで幅広く出てきます。そして読むごとにそのカクテルを飲んでみたいと思えるものとなっています。
カクテルは、やはりバーのカウンターで静かに飲むものであって、チェーン店の居酒屋にある出来合いのものでは雰囲気が出ません。バーのカウンターは大人の居場所であって、カウンターで静かに飲めるようになるのは人間としての成長なのかもしれません。
行きつけのバーのカウンターでカクテルを楽しみ、そして2杯ほどでスッと帰る。そんな時間を久しぶりに楽しみたいと心底思った1冊でもあります。
ハリー・ポッターと死の秘宝 [900番台]
「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)
- 作者: J. K. ローリング
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2008/07/23
- メディア: 単行本
シリーズ最高かも。
火曜に借りてきて、今日全部読み終わりました。下巻に至ってはほぼ2日で560ページを読み終わる状況で、最後の200ページは一気に読み進めてしまう具合でした。
以前取り上げたときは、この本を「ジェットコースター」と評しましたが、今回のシリーズ最終巻は、明らかに最初から山場のようなもので、ジェットコースターと言うよりドラゴンクエストの最後のダンジョンに入って、ラスボスを倒すためのアイテムを集めて実際に戦うといった感じを受けました。
特に下巻の最後に、すべてを納得させる話が出てきて、これまでの経緯が実はこのような背景があったのかとパズルのピースがはまるべき所にキレイにはまる爽快感すらありました。
完成度としては、この最終巻が図抜けていると思います。果たして、作者はどこまで想定してこの物語を書き始めたのでしょうか。ある程度の準備をして書き出したとは思いますが、その世界の大きさと緻密さ、そして伏線の複雑さとすべてに矛盾のない構成は、生活保護を受けながら書き上げたとは思えない壮大なモノでした。
ちょっと物量として多いので大変かもしれませんが(2冊合計で1100ページ)、読み出すと止まらないことも事実です。今年最高の本とは言いませんが、最高に近いものであることはたしかです。日本ではこのような壮大な物語を書き上げることができる作家がいるのかどうか・・・
世界のエイプリルフールジョーク集 [900番台]
世界のエイプリルフール・ジョーク集 (中公新書ラクレ 271)
- 作者: 鈴木 拓也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
ま、四月じゃないですけどね。
例えば、こんな話があります。
Googleの検索には、PigeonRankと呼ばれるウェブページのランク付けのシステムがあります。実は、これはたくさんのコンピュータの前の鳩(!)が、ウェブサイトを選別しているというものです。
もちろんウソですが、これが2002年のエイプリルフールに発表されたものです。海外、特にイギリスにはエイプリルフールに渾身のウソ記事を書く傾向があります。そしてそれをちゃんとジョークとして受け入れる素養があるのがイギリスだったりします。
となると、日本ではどうか?その昔、朝日新聞が2年ほど同じようにエイプリルフールにウソの記事を書いたのですが、逆に「朝日がウソの記事を書くのはけしからん!」と抗議が来たとか。それで朝日はやめてしまって、日本では東京新聞が毎年頑張って記事を書いているとのことです。
その渾身の傑作が「シマウマの競馬開催へ!」というものです。合成写真で芝コースを疾走するシマウマの写真まである傑作でした。この本は、このような記事ばかり集めたものなのです。エイプリルフールの記事を楽しむことが主眼ではなく、文化の違いを感じることがこの本の最大のポイントかもしれません。日本では無理、でもなぜ海外ではそれが受け入れられるのか?日本人に余裕がなくなったのでしょうか?
その昔、「史上最低の遊園地」なんて傑作があったんですけどねぇ。
タグ:史上最低の遊園地
教科書に載った小説 [900番台]
文章には、読み頃がきっとある。それを逃すととても損をした気になる。
その名の通りの本です。教科書に掲載された小説のなかで、面白そうと思えるものを編者である佐藤雅彦さんがセレクトして一冊にしたものです。基本的に国語の教科書に載っていた小説で構成されています。
自分自身を思い出してみると、国語の教科書を先読みすることはとても楽しかったことを覚えています。教科書にはいくつも文章(小説やエッセイ、詩や俳句・短歌など)がありましたが、必ずしも全部を授業でやるものではありませんでした。ですから、自分で勝手に読む以外に触れることなく通り過ぎていく文章が実にたくさんあったんだなと、この本を読んで実感したものです。
もちろん、私もそれ相応の年齢になりましたから、自分が読んだ小説がこれに入っているわけではありません。でも、だいたい中学ぐらいにこの小説に触れていたら、きっともっと違う世界が開けていたんじゃないかなと強く感じました。だから、文章には、絶対に読み頃があると感じるのです。私の場合は幸か不幸か高校に入る直前に点と線 に出会ってしまったばっかりに、大人でも読めるものを高校生で読んでしまって、本来高校生で読むべきタイミングを失したような気がしていました。
だから、このブログでも志賀直哉や芥川に走ったりするのですが、そのたびに「やっぱり」と思うばかりでした。そこにこれですから、追いかけてでも読むべきかなと思ったりしています。さしあたっての私の課題図書は、太宰と三島になりそうですが、これまたどこから読もうかと・・・
この本の小説は、昭和61年から平成18年までの国語の教科書に掲載されたもので構成されています。ですから、今の子供たちも、触れる機会がある小説でもあります。子供がいるお父さん、お母さんも、一度国語の教科書を手にとって見ませんか?ひどく薄くなっていることは気にしないで、小説を読むいいチャンスかもしれませんよ。
タグ:教科書
雅楽戦隊ホワイトストーンズ [900番台]
DVDとは違う、あまりにシリアスなホワイトストーンズ。
水曜どうでしょうファンの方は、おそらく自然の流れでドラバラ鈴井の巣にたどり着くでしょう。そのドラバラの第1弾がこの「雅楽戦隊ホワイトストーンズ」でした。DVDはあまりのバカバカしさに笑いまくってしまう危険な(?)内容ですが、その原作者である鈴井貴之社長が、小説版のホワイトストーンズを書き下ろしました。
この小説が、見事にDVDとは違う、実にシリアスな内容になっています。相変わらず札幌市白石区だけ狙われていますが、それを救うヒーロー役がスナック店員、電器屋の跡取り息子、そしてデブのニートと、実に「ありえない」設定になっています。正義のヒーローですが、ヒーローにつきものの変身もしません。悪の怪人も出ません(秘密結社は出てきます)。世界の平和は守れないけど、自分の身近なものは守りたいと頑張る冴えないヒーローは、見事なまでに等身大なヒーローとなっています。
DVDを見てしまった方は、物は試しこの小説版を読んでみてください。そして小説版を始めに読んだ方は、DVDを見てください。同じ人間が、ここまで違うモノを書けるという才能を感じてみてください。
北海道テレビのドラバラをもっと知りたい方はこちらからどうぞ。
万物理論 [900番台]
その物量以上の面白さ。
唐突ですがSFです。小説を読むこと自体珍しいのですが、これをSF小説と思わず来る未来と思って読むと途端になんともいえない違和感を感じるようになります。
そう、内容としては、以前取り上げた22世紀から回顧する21世紀全史を思い出させます。主人公は映像ジャーナリストですが、登場のシーンからして死体の脳から一時的に記憶を呼び出して犯人を語らせ、そしてそれを映像として番組(もちろんインターネット上で公開する番組)を作成するなんて、「こんなんありか?」と思える場面です。
しかもこの主人公、自分のおなかの中にコンピュータを内蔵させ、へそに光ケーブルを接続してコントロールするなんてことも出てきます。肩にパッチを当ててこれで体調をコントロールする薬物(もちろん遺伝子操作していたりする)を注入させて仕事の時間に集中できるようにしています。これも近い将来実現しそうな(もしかしたらどこかで実現させているかも)技術です。
ジャーナリストだけに視神経にコンピュータを接続し、自分の見たものを記録できるようにしているし、自分のエージェントにインターネット上で興味のある情報を収集させることもしています。そんなジャーナリストが人工的に作られた島(通常の国ではないから行くのにとても苦労する場所となっている)で起こるノーベル物理学者の様々な事件を取材するうちにトラブルに巻き込まれて・・・と進んでいきます。
読んでいるだけで大変な量(600ページ以上)ですが、この未来は性別が5つ(それぞれの性を強化した強化男性・強化女性、逆に性を弱めた微化男性・微化女性、そして両方の性を持つ汎性)も増えているし、それが大きな役割を果たす場面もあります。600ページ以上という量と違和感はありますが、読み出すと止まらない面白さがある本となっています。
同じような内容の本があるということは、同じようなことを誰もが考えていることにつながるはずです。となると、これは本当の未来の姿なのかもしれません。
スパイのためのハンドブック [900番台]
スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79) (ハヤカワ文庫 NF 79) (ハヤカワ文庫 NF 79)
- 作者: ウォルフガング・ロッツ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/03/30
- メディア: 文庫
どこまで本当の話か分かりませんが・・・
これは、元スパイの伝記です。実際にイスラエルのモサドのスパイとしてエジプトで活動し、逮捕されて捕虜との交換で釈放されたという経歴を持っています。そんな元プロが、自分自身がどのようにスパイになったか、スパイになるためにどのような手順を踏んだか、そしてどのような教育を受けてどのような仕事をしていたかなどが事細かに説明されています。
スパイというとジェームス・ボンドが一番有名だと思いますが、実際のスパイはどうやらとても地味で難しい仕事のようです。例えば尾行の仕方などは、炎天下の街中で実際に指導員を気づかれないように尾行する訓練が繰り返し行われたことが書かれています。この他にも相手国に潜入しての活動の様子や、引退した後どのような生活をするかも教えてくれます。
とはいえ、この本分類上933に分類されています。これは英米文学の小説が分類されるところです。だからどこまで本当なのかは、読む人次第となりそうです。ただし、この本は、ソーシャルエンジニアリングのサンプルとして考えるととても参考になる本でもあります。