ちんろろきしし [700番台]
伝えることの本質を考えてみる。
絵本です。大きな本ではありません。見開きで意味のない言葉と、イラストが並んでいます。
どの言葉も、特に意味がないのに、その言葉の響きに似合いそうな、イラスト。
この絵本を見ていると、言葉ってなんだろう?意味ってなんだろう?って思います。意味が分からなくても、もしかしたら、届くものがあるのかもと。
さだのはなし [700番台]
トーク集が本になる歌手って(笑)
さだまさしコンサートに行ったことがありますでしょうか?行くと長いので有名ですが、長い原因がこのトークというのもまた有名なところです。漫才ブームのとき、花王名人劇場に出た事もありましたし(笑)
私が初めてまっさんのコンサートを見たのは
その、歌よりも比重が高いかもしれないトークの最新版がこれになります。活字で読んでも面白いのだから、これを生で聞いたらもっと面白いことは保証します。
なにより、最近の「すべらない話」系のような感じではなく、そこには人に対する暖かい目があるように思えます。忘れてはいけないけど、みんな忘れてしまったような、そんな日本人が持っていたものを、まっさんのトークでもう一度認識させてくれる本でもあります。
実際に音声で聞きたい方は、なんとトークCDという画期的(?)なものもありますので、そちらもどうぞ(笑)
タグ:さださまし
さだまさしのセイヤング [700番台]
さだまさしのセイヤング―愛と感動とギャグのハガキ・コミュニケーション集 赤本
- 作者: さだ まさし
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
さだまさしのセイヤング―愛と感動とギャグのハガキ・コミュニケーション集 青本
- 作者: さだ まさし
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
その昔、こんなすばらしい時代がありました。
元リスナーとして、図書館にこれを見つけたときはうれしいものがありました。
当時、文化放送で土曜の深夜から日曜にかけて放送していたさだまさしのセイ!ヤング。当時ですら珍しいくらいの、古いタイプの深夜放送でした。中学から高校にかけてよく懸命に聞いていたものです。
このころのラジオ番組は、参加するにはハガキを書くしか方法はありませんでした。ですから、ハガキを書いて出しても、読まれるのは翌週か、その次の週になります。それでも「読まれるかも」とワクワクしながら待つ時間がありました。今のように、出してすぐ読まれないとムッとするような、そんなせっかちはいない、そんな時代でした。
この2冊には、その当時に読まれたハガキがそのまま掲載されています。もう20年ぐらい前に聞いていた常連さんの名前がそこにはありました。そして、今のような世知辛い、欲の皮の突っ張ったような話題はほとんど出ていませんでした。
メールではおそらくこのような内容を書くことは難しいかもしれません。ハガキという限られた面積に思いを詰め込む作業の、なんと充実したものだったことか。古きよき時代の、昔話です。
再掲:マネーボール [700番台]
岩隈が行くかもしれないチームは、こんなチーム。
イーグルスの岩隈久志投手の交渉先がオークランド・アスレチックスに決まりました。オークランドといえば、この本です。オークランドのGMであるビリー・ビーンが、どのようなコンセプトでこのチームを作っているかを知ることができます。
ここのコンセプトは、とにかく自分たちの物差しにあう選手を安く集めて、活躍したら高く売って、そしてまた選手を集めて・・・というものです。
物差しも、打者であれば長打率と出塁率であって、ホームランをどれだけ打てるかは健闘の対象にしないというものです。だから、金持ち球団のヤンキースなどど貧乏球団でもやっていけるというわけです。
たしかに、よくプロ野球の入団テストで、50mをどれくらいで走れるかや遠投何mかなどと評価基準が出ていることがありますが、それってアスリートは見つけられても「いい野球選手」は見つからないかもしれないのです。読売がドラフトで長い間苦しんで、育成枠をうまく使うようになったのは、身長が少しぐらい小さくても、「野球選手」としていい選手を探して取るようになったからでしょう。
どの数字に野球選手としての能力を見出すか、その面白さを教えてくれる1冊です。
ただ、個人的にはサイン&トレードじゃないかなとは思っていますが・・
野球は人生そのものだ [700番台]
なるほど、だから今のプロ野球は面白くないわけだ。
いわずとしれたミスター、長嶋茂雄の自伝です。子供のときから高校・大学を経てプロの選手・監督、そして第一線から身を引いたところまで書かれています。巻末には家族が見た病気についても書かれています。
現役時代、燃える男と言われていましたが、そのルーツは大学時代まで遡るのだそうです。大学時代の監督(先日亡くなったそうですが)がその素質を見込んで、当時としては最先端のメジャーリーグの選手の分解写真を見せて「プロに行くなら個性が大事だ」と教え込んだそうです。
だから、大学3年ぐらいから「どうやったらお客さんを喜ばすことができるか」を考えて実践していたそうで、後楽園球場に試合を見に行っても、「俺だったらこんなプレーをする」という気持ちで見ていたのだそうです。
また、プロになってからは、決して自分を追い込む練習をファンには見せなかったそうで、「ファンには素晴らしいプレーだけを見せる」ことに徹していたのだそうです。
だからこそ、あれだけ憧れの対象だったと考えられるのですが、今のプロ野球の選手に、子供(大人も含めて)がこれだけ憧れる選手はいるのでしょうか?
長嶋さんが考えていた「ファンを魅了する個性」について、今の選手はもう一度考えるべきだと思うし、マスコミもお笑いの面だけ強調するような、そんな番組は止めてほしいものです。
プロアスリートは、誰でも簡単になれない、特別な職業なのだから。
タグ:長嶋茂雄
ブラインドサイド [700番台]
アカデミー賞主演女優賞の原作。たぶん映画はほとんど話題にならなかったはず。
ぼちぼちの再開です。ある程度本を読める環境になったので、少しずつ書いていきます。
で、今回取り上げるのは、映画「しあわせの隠れ場所」の原作になります。内容としては、アメリカンフットボールのオフェンスラインという、日の当たらないポジションの選手が、いかにNFLで高給取りになってきたかという実態と、主人公のマイケル・オアーがどうやってNFLのところまでたどり着いたかを書いた部分のふたつで構成されています。
ある意味「アメリカンドリーム」ではあるのですが、これが21世紀になっても実際に起こるということ、そして貧困から抜け出す唯一の方法になるかもしれないということがよくわかります。
193cm・141kgの黒人の高校生を、白人のある程度裕福な家庭が引き取る形でそのアメリカンドリームを支えることになるのですが(この家族の母親役がサンドラ・ブロック)、全米でも上位に入る貧困地域からよくもまぁここまでたどり着いたものだとしか思えません。
この場合は、高校にまず満足して行けない状態だったために、高校でそれなりの成績を上げることが最初の目標になり、その努力が実を結び大学への道が開け、そしてNFLの扉が開きました。もしこのときに救いの手がなければ、ドラッグの売人になるぐらいしか道がないような地域ですから、なにを差し置いても「やはり教育」がその道を開くきっかけになるのです。オアーの友人でやはりアメリカンフットボールの高い素質がある選手も、生活のために学校をドロップアウトせざるをえなくなり、やはり貧困を脱出する道を絶たれたことも書かれています。
アメリカの底辺は、こんな厳しい現実と戦っているのですが、そこから救いの手を差し伸べる人間がいるのもアメリカ(というより、キリスト教徒か?)です。ちなみに、マイケル・オアーがNFLに入ったときの高額のサラリーの使い道は、この母親が「使い道が見つかった、基金を作るのよ」というような話が出てきます。成功したら、その成功を社会に還元していく、これが日本では一番できないことかもしれません。
一字一会 [700番台]
自分だったら何を書く?
この本は、さまざまな人に「何かひとつだけ、字を書くとしたら」の問いに答えてもらったものです。100人がそれぞれ自分の文字を選び、その理由を書いています。
中島みゆき、水森亜土が選んだ「ん」
岸田今日子の「毒」
長田弘の「○」
谷川俊太郎の「し」
香山リカの「愚」
そして清志郎の「神」
その文字も、そのキャプションも、おそらく本人が書いたものなのでしょう。その人となりが見事に出ています。頻繁に開けてみるような本ではありませんが、時々手にとって、思いつきで開いたページをなんとなく見て考える。そんな使い方をしてみたい本でもあります。
それにしても、清志郎の「神」は、本人が神になってしまってからこの本を見つけてしまったのでなんとも言えない、不思議なそして納得する一字です。
サッカー王国に見る「決定力」育成法 [700番台]
サッカーだけに限らないかもしれない。
日本のサッカーは、「決定力に不足して・・」という話はそれこそここ何年も課題として言われ続けています。決定力不足という人間に限って、「それじゃどのようにしたらいいのか」を提示できないのも、これまた何年も変わっていない話でもあります。
この本は、決定力がある=ブラジルのサッカーと設定して、ブラジルではどのような育成をしているのかを分析したものです。そこに書かれていることは、サッカーに限らない日本のスポーツの育成の限界を見せられるように思えました。
例えば、プロになるまでブラジルではGKと1対1になる局面は約30万回あるのに対し、日本では5千回という話が出てきます。ゴールをどのように奪うかについての経験値がプロになる前の段階でこれだけ差がついているのであれば、決定力が不足するのも当然です。
また、シュート練習を行うときは(実際はシュート練習だけに限らず)、必ず守備側の人間をつけて行うそうです。日本だったら誰もいない状態で易しいボールをシュートするだけでしょうが、繰り返した数だけ上手くなることを考えると、イージーな局面ばかり子どもの頃に練習した日本人に決定力を求めるのが間違いに思えます。
この守備側をつけて練習をするということは、実はサッカーに限らず他の両チームの選手が入り乱れた形で行う球技ではほとんど行われないのが事実です。私の専門(見るだけですが)はバスケットですが、バスケットも世界が非常に遠い状況になっています。その練習がここで指摘されている「守備側の選手がいない状態での練習」がほとんどなのです。
もちろん世界に通用する球技があることも事実ですが、その代表である野球やバレーボールは残念ながら攻撃と守備がはっきりと分かれている状態で行われます。だから自分たちだけを高めることで通用することが考えられるのですが、サッカーやバスケットではそのやり方では通用しないのではないかと。通用しないから弱いと考えられるのです。
日本のスポーツは「型」をまず練習します。もちろん型は必要ですが、それ以上にその競技に即した練習を積み重ねることのほうがはるかに重要ではないかと思わせる1冊でした。
あの日、野球の神様は”背番号3”を選んだ [700番台]
あの日、野球の神様は“背番号3”を選んだ―天覧試合昭和34年6月25日
- 作者: 松下 茂典
- 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
- 発売日: 2009/06
- メディア: 単行本
結末は知っているんですが、なぜそれが実現したかは知りませんでした。
私の母と生年月日がまったく同じ長嶋茂雄が最後にサヨナラホームランを打ったことは知っていますが、この本を読むまで、どのように天覧試合が実現したのか、また試合経過はどのようなものだったのかはまったく知りませんでした。
もともとは昭和天皇が後楽園球場の方向を見て侍従に「あの明かりは何か?」と質問して、「プロ野球のナイターです」と答えたことがきっかけだったようです。昭和34年ですから、戦後としてはずいぶん時間が経過しているはずですが、両チームの監督は顔を上げることができなかったそうです。天皇陛下の顔を見上げてはいけないという教育を受けていたために、そのようなことになってしまったとか。
もちろんこんな状況ですから、選手も監督もガチガチに緊張していたことがよく伝わってきます。阪神は小山、巨人は藤田と両方ともエースを立てての試合で、小山から村山に阪神はリレーしていますが、藤田は完投勝利をしていました。
最終スコアは5対4ですが、巨人の得点はすべてホームランで、ONのアベックホームランの初めての試合だったそうです。最後の長嶋のサヨナラホームランで試合が決まりましたが、天皇陛下の退席が21時15分と決まっていて、残り3分で出たサヨナラホームランだったそうです。警備の都合で、退席の時刻は決められていたのに、その時間内にしっかりホームランを打ったのも、そしてこの試合でも誰よりも燃えて緊張していなかったのが、長嶋茂雄らしさを思わせます。
もう昭和の空気がいっぱいに感じられる内容となっています。これがプロ野球の人気を決定づけた試合でもあります。最近のプロ野球の失速感を感じている人間としては「古きよき時代」だったのかなと改めて思います。
長嶋のようなチャンスに誰よりも燃える、プレッシャーをエネルギーに変えられるような選手はもう2度と出ないかもしれないなとも。
タグ:天覧試合
マーヴィン・ゲイ物語 [700番台]
マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル (P‐Vine BOOKs)
- 作者: デイヴィッド・リッツ
- 出版社/メーカー: ブルース・インターアクションズ
- 発売日: 2009/05/28
- メディア: 単行本
おそらく過去読んだ中でもっとも最後がやってこないかを待ちわびる本。つらさでは過去最悪かも。
ソウルが好きな人であれば、一度は聞いたことがあると思います。No.1のソウルシンガーで、「
What's Going on」は9.11のときには救済基金の曲として取り上げられた、そのオリジナルを歌ったシンガーでもあります。
この曲自体1971年ですから私は物心がついたかつかないかの頃のはずですが、なぜかサビの部分が歌える、どこか記憶の片隅に引っかかっている曲でもあります。
その曲をヒットさせたマーヴィン・ゲイの伝記なのですが、これがまた出てくる話がこれでもかというくらいつらい話が続くものとなっています。生まれたときから父親との確執があり、そして最後まで解消されることなくその父親に射殺されるところまでしっかりとこの伝記では書かれています。
最後に父親に射殺されることは知っていましたが、そこに早く来ないかと思ってしまうくらい、あまりにつらい本です。ライブをスケジュールしても土壇場でキャンセル(というより逃げ出してしまう)ことを繰り返し、ドラッグにおぼれ、精神的に追い詰められてしまう姿は、トップシンガーの姿とはとても思えません。
モータウンではもちろん売れっ子になりますが、曲を作るのに異常に時間がかかったり、ダイアナ・ロスのいたシュープリームスに嫉妬のような態度を示したり、妻とも確執があったりともう滅茶苦茶です。周りは心配しているのに、それが本人だけわからないという最悪の状況でもあります。
この本、少しだけマイケル・ジャクソンの話が出てきます。ジャクソン5を見つけたのはダイアナ・ロスだったような話になっていますが、本当はどうやらモータウンのボスだったベリー・ゴーディーがそのように売り込んだというのが真実のようです。
当時のヒットを出した黒人シンガーを取り巻く環境がよくわかります。クインシーのときもそうでしたし、マイルス・デイビスの自伝も同じようなことが繰り返し出てきます。おそらく、将来出るであろうマイケル・ジャクソンの自伝も、きっと同じようなことが書かれているはずです。免疫がないときっとつらいだろうと思い、これを取り上げる次第です。