サッカー王国に見る「決定力」育成法 [700番台]
サッカーだけに限らないかもしれない。
日本のサッカーは、「決定力に不足して・・」という話はそれこそここ何年も課題として言われ続けています。決定力不足という人間に限って、「それじゃどのようにしたらいいのか」を提示できないのも、これまた何年も変わっていない話でもあります。
この本は、決定力がある=ブラジルのサッカーと設定して、ブラジルではどのような育成をしているのかを分析したものです。そこに書かれていることは、サッカーに限らない日本のスポーツの育成の限界を見せられるように思えました。
例えば、プロになるまでブラジルではGKと1対1になる局面は約30万回あるのに対し、日本では5千回という話が出てきます。ゴールをどのように奪うかについての経験値がプロになる前の段階でこれだけ差がついているのであれば、決定力が不足するのも当然です。
また、シュート練習を行うときは(実際はシュート練習だけに限らず)、必ず守備側の人間をつけて行うそうです。日本だったら誰もいない状態で易しいボールをシュートするだけでしょうが、繰り返した数だけ上手くなることを考えると、イージーな局面ばかり子どもの頃に練習した日本人に決定力を求めるのが間違いに思えます。
この守備側をつけて練習をするということは、実はサッカーに限らず他の両チームの選手が入り乱れた形で行う球技ではほとんど行われないのが事実です。私の専門(見るだけですが)はバスケットですが、バスケットも世界が非常に遠い状況になっています。その練習がここで指摘されている「守備側の選手がいない状態での練習」がほとんどなのです。
もちろん世界に通用する球技があることも事実ですが、その代表である野球やバレーボールは残念ながら攻撃と守備がはっきりと分かれている状態で行われます。だから自分たちだけを高めることで通用することが考えられるのですが、サッカーやバスケットではそのやり方では通用しないのではないかと。通用しないから弱いと考えられるのです。
日本のスポーツは「型」をまず練習します。もちろん型は必要ですが、それ以上にその競技に即した練習を積み重ねることのほうがはるかに重要ではないかと思わせる1冊でした。